2010年8月21日 いよいよフロントフォークのOHとホイール一式が装着される日がやってきました。7月25日にZX-4のフロントホイールを外してよりおよそ1ヶ月・・。
あってもメッサ暑くて殆ど乗らないけど、無いと寂しいというのがバイクというもの(笑)この日は猛暑ながら出張専門バイク屋さんである謎Zさんを自宅に呼びつけて作業していただく事になりました。自宅作業はこれで2回目。10:00に謎Zさんはやってきました。

「謎Zさんおはようございます!」

「まっちゃんおはよう!」
「謎Zさん、今日は10:00でこの暑さですから辞めておきましょうか?」

「あ・・あんたーっ!ここまで呼んでおいてそれはないやん〜。」

「いえいえもう少し涼しくなってからの方がいいのかな〜なんて。」

「私は今日何としてもやります(怒)」

「凄い気合ですね〜。」
次から次へと軽バンから工具が降ろされてくる。

「本当に出張バイク屋さんなんですね!」

「フォークOHに必要なものはひととおりあります。今日お借りしたいものは100Vの電源かな。」

「缶コーヒーはっ?」

「それが本日の工賃というオチでなければ頂きましょう(笑)」
「謎Zさん道具たくさん運んで、そこらじゅうに出かけて、なんだか寅さんみたいですね!」
「どこでも出張修理する覚悟ですから。」
「それ何してますの?」
「ガソリンスプレー。」
「火吹くの?」
「オイルまみれの作業ですからパーツクリーナーが大量に必要となります。それよりもこの方が効果的なんです。マジックリンの容器が一日で変形してしまうので作業終了後に携行缶に戻さないといけないんですけどね。」
「プラスチック容器が変形してしまうのですか?」
「そう。気を遣わないといけませんよ。危ない事ですからね。」
「それが新品のベアリングですか?」
「そう・・。ベアリングはこのサイドがメタルの品番がお勧めなんですよ。Z品番って言うんですけど左のものよりも数百円高いだけでダストが入りにくいし私のお勧めなんですよ。最近私はこればっかりかな。」

「謎ZさんがZ品番をお勧めですかぁ。まさにZZですね〜。」

「・・・・・・。」
新品だけに非常にスムーズに回る。

当たり前のことですけども。

これで先日のリアに引き続き、フロントも新品のベアリングが装着されるという事になります。
「さて、はじめましょうか?あれ?シルバーのがヤフオクで落としたやつですよね、ZX-4純正の・・。黒のがドナー君のですよね。まっちゃん、インナーチューブよく見てみて。ZX-4純正のほうが短いですよ。」
「あれ、ラパイドさんで見たときも全然気がつかなかった・・。今までZX-4ではない何か解らないフォークで走ってたのかな?」

「よく見ると解るレベルですからね。でもどう見ても長いですよ・・。」

「今までインナー2センチ程長いのにさらに5センチの延長組んで走ってたのね?7センチ近く長かったんだ!それはバランス悪いはずですね〜。」
「計測しましょう。やっぱりZX-4のインナーより15ミリ長い。オイルの量はZX-4が基準沈ませて上から133ミリだから148ミリにしないといけませんね・・。」

「ややこしいなぁ・・。短いZX-4のインナーに延長組もうかな?」

「それ・・余計にややこしいなぁ(爆)おそらくドナー君のインナーチューブはZX-4ではなく、Kawasaki41パイフォーク流用でしょう・・。ゼファー400カイ、ZRX400、ZZR400、ゼファー750あたりのものでしょう。」

「謎Zさんが謎なお話で、謎謎ですね〜。」

「・・・・・。」
「さて、まっちゃんのウケないツッコミはさておき(爆)オイル抜きましょう!」

ドロロロロ〜ンッ!

「く・・臭っさー!バーバ君やナオちゃんが言ってたの、これね。」

「独特の香りがするでしょう。重油というか埃というか。」

「真っ黒ですね、銀色のアルミカスもたくさん入ってますね。」

「このアルミカスはベアリングやガイドが削れたものでしょう・・。」
「謎Zさん、お日さま登ってきましたよ。場所を変えましょう。」

「今日は暑くてどうしようもないなぁ。」

「熱射病には気をつけましょう。倒れたらシャレにならないですから。」

こうして日が当たるところを避けて、フォークは4本ともオイルが抜かれていきました。

「まっちゃん、4本ともオイルの色が違いますよ(笑)」

「はははは。どんなもんでしょう?」
11:00 猛暑の中、開始から1時間経過。謎Zさんの車からエアーコンプレッサーが降ろされました。

「まっちゃん、電源貸しておくれ。」

「どうぞ・・。」

ゴ・・ゴロゴロロロロロロロロ・・・・。

住宅街にエアコンプレッサーの爆音が鳴り響きます。
「謎Zさん、エアコンプレッサー用意して何されますの?」

「これからフロントフォークの最下部のボルトを緩めていきますが、後で絵を描いて詳しく説明しましょう。」

「何か訳がありそうですね。楽しみです。」
「やりながら説明しますからよーく見ていてくださいね。見ればものすごく簡単な事ですから。」

「はい・・・・。」
「まず、埃や水をさえぎるダストシールを外しますね。マイナスドライバーでゆっくりこじれば簡単に外れていきます。」

「おおぉ〜!」
「随分へたっていますね。このパーツは新品が届いていますから何をやっても大丈夫ですよ。」

「・・・・。」
「次にシールストッパーリングを外していきます。これもマイナスドライバーで簡単に外れますから。」

「・・・・・。」

「こちらも新品が届いています。」
こうしてダストシールとシールストッパーリングは外されていきました。

「中のオイルシールはどうやって外すの?」

「まだまだ先です。インナーチューブを引っこ抜くとついてきます。入れる時は叩く、抜くときはインナーチューブ毎引っこ抜くという具合です。結構はめるのも抜くのも力が要ります。抜くのは古いから抜きやすいけど、新品をはめるほうは結構力いるかな?」

「楽しみにしておきましょう。」
「うわぁ、まっちゃん!ZX-4のアウターチューブの一番底のところ、六角の長さが足りないわ。穴が小さいからラチェットが入らないと言うのが正解かな?ZRX400やゼファー750あたりはここの穴が大きいからラチェットが入るのですが、これはいけない・・。」

「どうしたらいいの?」

「先の長い6ミリ6角のラチェットある?」

「無いですわ〜。」

「普通のL字の6ミリの6角ある?」
「ありますよ。」

「Snap-onだから、刺せるから、まっちゃんの工具ぶった切って差し込んでもいいかな?」

「何でもOK久保恵子ですよ。」

「・・・・・。」
こうしてL字6ミリ6角はサンダーで切り取られて、Snap-onのラチェットに差し込まれました。

「まっちゃんのZX-4アウター特殊工具が出来上がりましたっ!」

「Snap-onって便利ですね〜。」

「こういう応急処置用ではないのでしょうけど、外れるのは便利ですね。」
「おおぉー!長さも十分ですよ!なかなかいい感じですね!」

「工夫の逸品ですね。」
ちょっと距離をおいて撮影しました。

屋根のない駐車場での作業。

南玄関の家ならば死んでしまうところです。
「さて、行きますよ〜!」

ブル〜ンッ!

エアコンプレッサーの強力なトルクでボルトは一気に外されて行きました。
「まっちゃん!うまいこと行きましたよ〜。」

私はフォークをバラした事も見たこともないから、何が何かよく解らなかったけれど、まぁ、うまくいって良かったと思っていました。
それからスコン!スコン!とインナーを外側に引っ張り、インナーは外されていきました。

ズボッ!

「抜けました。」

「随分硬いんですね。」

「硬いのはさっきの話のオイルシールなんです。同じ以上の力がはめるときに必要ということです。」
「この先っちょのが、さっきのボルトでとまってたシートパイプです。」

「何だか犬のオチンチンみたいな形していますね〜!」

「・・・・・。」
インナーチューブに着くもの。上からオイルベアリング、オイルシールストッパー、オイルシールの順に並びます。

オイルシールがインナーについてくるという意味が解りました。
「これらに着いた汚いオイルを、入念にガソリンスプレーで洗浄することこそ、ベストコンディションを保つ秘訣なんですよ。」

謎Zさんの手によりシートパイプはピカピカに洗浄されていきました。
細部に渡るまで綺麗に洗浄を・・・。
「結構インナーも汚れていますね。これらは入念に洗浄しておいた方がいいですね。オイルに混じるアルミカスが残っていると新品のシールを劣化させる場合がありますので。」

ガソリンスプレーでの洗浄は続いていきました。
ドナー君のフロントフォーク1本分がバラバラになり全てピカピカになっていきました。
この作業が繰り返されて、4本全てがバラされていきました。

12:00 作業開始から2時間で4本のフォークの全バラが完了。
ここでインナー長以外の違いを発見。

「まっちゃん、ドナー君のシートパイプはZX-4のものではないなぁ。オリフィス(オイルが通る穴)の大きさがこれだけ違う。」

「本当ですね〜。ZX-4の方がメッサ小さいじゃないですか。」

「ZX-4は88年のレーサーレプリカだから高速域でダンパーを効かせる、ドナー君のシートパイプは穴が大きいから街乗りセッティングのもの・・おそらくゼファー400カイあたりでしょうね。」
「穴の大きさが違うのは高速でダンパーを効かせるか、低速でダンパー(減衰力)を効かせるかの違いですね。」

「そうです。穴が狭くてもゆっくりの領域では十分オイルは流れる。速い速度ではそれが限られてくるという原理です。水鉄砲を例えに。水は先っちょの小さい穴から勢いよく出るけど、速い速度で動かすことは無理。先の穴を大きくして行けばして行くほど速く動かす事が出来るでしょ。それと同じ原理です。」

「なるほどなぁ〜。あと、車種は違うけれどシートパイプの長さは全く同じなんですね。」
「実はこのシートパイプの長さがフォークのストローク長になるんです。」

「何で?何でストロークが関係するの?」

「そう。ストローク。絵を描くとね、さっきエアーコンプレッサーを使用してトルクをかけて外したボルトは、シートパイプとアウターを止める一番下のボルト。トルクをかけたのはゆっくり回すとシートパイプも共に中で回ってしまうから。特殊工具でシートパイプを固定してボルトを緩めてもいいんだけど、このやり方のほうが特殊工具も要らないし速いし楽なんですよ。シートパイプはアウターの下部に固定されていて、インナーだけが走行中にアウターの中を移動すると考えてみて下さい。インナーにはスプリングが入っているけど、スプリングだけではダンパー効果はありません。インナーとアウターの中にオイルがいて、このシートパイプの穴を通じてオイルが行き来してダンパー効果を得るという仕組みです。」

「なるほど。」
「あと、シートパイプ側にある小さなスプリングは完全に伸びきった時のダンパーの役割をするものです。」
「ガツンッ!とこないように?」
「そういうことです。あと、シートパイプの長さが全く同じなのは同じストローク設定であるKawasaki41パイのフォーク流用だからでしょう。つまりどちらをチョイスしてもOKという事になります。」

絵を描いてもらったのを上の画像にまとめました。ちょっと間違っているかも知れないけどこんな感じだったと思います。

絵を描いてもらわないと、理解できなかったのですが、こんな私でもフロントフォークの原理がよく解った瞬間でもありました。
「さて、どちらを選ぼうかなぁ・・。」

よく見るとドナー君のフォークのインナーチューブには4つ穴がありました。

上の図からすると、オイルの行き来する穴はシートパイプ以外にインナーにもあるようです。沈む時、伸びる時、いろんな関係があると思われる。
こちらはZX-4のインナー。穴が2つしかない。

「ZX-4はシートパイプの穴も小さければ、インナーの穴の数も少ない事がこれで解りました。ドナー君の前オーナーは、アウターとスプリングはZX-4、インナーとシートパイプはゼファー400カイという組み合わせの様ですね。そこに5センチ延長キット。まっちゃん、現段階でZRX400のスプリングもあるからお昼の間に決めておきましょう。」

「すごいな!Kawasaki41パイフォークパーツ夏の祭典みたいになってきましたよ。」

12:20 そうして昼食に行きました。
13:30 作業再開。

「現在、左のドナー君のフォークを使用してこの指のあたりで走行していましたから、この際、右のZX-4で固めて延長キットを使用したら同じくらいの長さになったりしないかな?」

「はははは、さすがまっちゃんだ。凄い事考えますね。」

「謎Zさんならどうされます?」
「リアホイールのハブ追い込み方法など、いろんないわくつきのドナー君ですが(笑)どうしてキャリパー流用の出来ないZX-4のアウターを利用してまで、インナーやシートパイプにゼファー400カイをチョイスしたのか、長さも15ミリもZX-4よりも長いのにさらに50ミリ延長を組んでいたのか気になるところです。何も考えてなければ何も考えていないけれど、試行錯誤の結果だとしたら、ZX-4のダンパーセッティングでは街乗り硬すぎて乗り難かった。だからインナーやシートパイプにゼファー400カイをチョイスしたとも考えられますね。」

「ドナー君の前オーナーの方とお話したいところですね。」
「まぁ、ZX-4のアウター使用は確定していますからまず洗浄を始めますよ。洗浄の間に仕様を決めておいてください・・。まだ時間はあります。」

「こんなの難しくて決められませんよ〜。」

「ドナー君のフロントを組んでからずっとこの仕様で走り続けてきたのですから、冒険はよしたほうが無難かと。」

「ちょっと今のマシンのフォークからZRX400のスプリング抜いてきますね。」

「お好きにどーぞ(笑)」
「謎Zさん、ZRX400のスプリングのほうが細いし、カラーがZX-4と比較して長いですね。」

「本当ですね。ZX-4純正スプリングはプログレッシブ(不等間隔)ですけど、ZRX400は等間隔なんですね。」

バネが柔らかめでダンパーも低速で効かせる、ゼファー400やZRX400などはフォークオイルもたっぷりで、街乗りで非常に扱いやすいセッティングであると、ラパイドの大将が言ってた事を思い出していました。
「謎Zさん、僕、ZRX400のスプリングにしようかなぁ。」

「レーサーレプリカのプログレッシブタイプの強化スプリングとソフトな街乗り重視のスプリングを目の前にして、柔らかめのスプリングチョイスしますか(爆)」

「僕・・実は街乗り派なんです(大爆)」

「ブッ・・・。使用しようとするゼファー400カイのシートパイプやインナーのオリフィス(穴)が大きいからZRX400のスプリングをチョイスする事でトータルソフト・・2000年代の足を得る事は出来るでしょう。でもFXの乾燥重量200キロ、まっちゃん合わせて280キロ(やかましわい)を支えるのなら役不足かと思いますが如何でしょう・・。」
「なんという事を〜!。でも、ものすごく的を得ている・・。」

「インチキレーシングさんに所属しておみえならZX-4のスプリングでしょうね。ストロークが大きくなるならソフトなスプリングもお勧めしますが、同じストロークで硬い柔らかいを悩む必要はないかと・・。」

「はい。ZX-4でお願いします。」

こうして私のフロント廻りの仕様は固まっていきました。

しかし、私のマシンのフロント周り、Kawasaki41パイ・混ぜすぎ?
13:43 伊勢のまっちゃんさんにバフがけして頂いたZX-4アウターの洗浄が終了しました。

「まっちゃん、これ持ってみて・・。」

「おおぉー!何という軽さですか。これは軽い。」

「私も今まで相当台数のフロントフォークのOHの経験がありますが、これは軽いと思いますよ。乾燥重量152キロのZX-4の事ですから、肉厚は限界まで追い込んであると思います。1988・F3全盛期のパーツを流用することは安価で性能を追い求める手として究極の選択かもしれないですね。このアウターを持つに、GPZ400Rから20Kg程度シェイプアップしたKawasakiの熱意を感じます。」
確かにブレンボなど優れたパーツを簡単に流用出来ないから、3490円という破格でフォーク一式が手に入るZX-4の世界だけれど、この軽さには感動しました。

私はゼファー400やZRX400のアウターだけを持った事はないです・・。けれど、このZX-4のアウターの軽さにはびっくりしました。
「仕様が決まったから一気に行きますよ。」

「お願いします。」

こうしてゼファー400カイのインナーはガソリンスプレーで再洗浄されていきました。
シートパイプの下に来るアダプターも結構アルミカスが溜まっていた様子で入念に洗浄が行われて行きました。

「謎Zさんは結構マメですね〜。」
「アルミカスを少しでも残すか完全に取り去るかで、フォークの寿命にどれだけ影響を及ぼすか知っているからです。もし、これらのアルミカスがシールとインナーの間に挟まったらどうなるか・・たちまちオイルは滲み、再度OHをしなくてはなりません。こういうシートパイプの内側などは、パーツクリーナーの噴射力で完全に洗浄する。エンジンにはオイルフィルターがあるけれど、フォークの中にはオイルフィルターはありません。そう考えたとき、こういう入念な作業を行うことはどれだけ大切な事なのかと言うことです。」

「なるほど・・。」

私、この日、愛川欽也よりも「なるほど」と言っています(汗)
「いよいよ組み上げていきますよ。バラした時の逆でシートパイプをインナーに入れます。」
こうして見るとこのシートパイプ分しか動かないのが信じられない程、インナーから飛び出たシートパイプが短く見えました。

目の錯覚かな?
14:00 一本目の組み付け。

ガガガガガガガッ!

シートパイプのボルトは装着されていきました。
「うーん。いい感じですね。まっちゃん、触ってみる?」

「スコスコなんですね。そして左右のガタが結構ありますね。」

「スコスコなのはスプリングが無いからです。ガタがあるのはオイルシールが無いからです。オイルシールをを打つまでこのガタが出ます。解りやすく言うとオイルシールというパーツには、オイルをシールする役割と、インナーにガタが出ないようにするベアリングの役割があると言うことなんですよ。」

「上下と左右の役割ですね。オイルシールって凄いなぁ・・。」
こうして2本目の組み付けが行われて行きました。
ZX-4の新品オイルシールが用意されました。
新旧オイルシールを並べました。違いは歴然としていました。

右のは水洗トイレの排水ジョイントみたいに錆びてグズグズになっていました。

ダストシールの下で水分や埃の入らない世界といえども、こうして錆びてグズグズになっている。

メンテナンスというのは本当に大事。

多分交換されていません。1988だから仕方ないか。
こちらはZX-4純正オイルシールストッパーリング。
そしてダストシールが用意されました。
こちらはバイク屋さんの特殊工具。名前は知らない。けれどオイルシールをアウターに打ち付ける道具との事。

以前に沼津はアキヤマ先生がZ400FXのフロントOHをする際に、鉄パイプか何かでシールを打ち付けていると聞いた事がありました。多分それと同じ役割をする工具。
謎Zさんはシリコンをオイルシールに塗布していました。
その後フォークの上からオイルシールを被せていきました。

14:09 気温はピークに達していました。恐らく体温より高い37℃以上はあったと思います。謎Zさんの顔がお酒を飲んだ如く赤くなっていました。

「謎Zさん、大丈夫?」

「まだまだ大丈夫。」

朝10:00から作業し続けている・・。2010この夏特有の炎天下の環境の下で作業はいよいよシール打ちへ。本日のメインエベント・・架橋を迎えるのでした。
いよいよ特殊工具の使用開始・・。
スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ!

スライドハンマーで叩く。
スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ

「謎Zさん、どうですか?」

スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ

「謎Zさぁーん!」

スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ!

「謎Zすわぁ〜ん!」

スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ!
「まっちゃん、暑い・・・・。暑い・・・・・。」

「そっちですか〜い。」

「オイルシールストッパーリングがはまる位置までオイルシールが降りないなぁ。暑い・・・パワー不足かなぁ。・ここで辞めようかなぁ・・。」

「Stage167 謎Zさん熱射病で倒れる。でもええんやに(爆)」

「ははははは。それもいいね。あとちょっとのところなんですけどね。」
スコンッ!スコンッ!スコンッ!スコンッ!

「行った〜。これでリングは・はまります。」

「お疲れさまでございます。」
「ピンがはまりました。これはいい感じですね。しかし硬かったなぁ。」

「炎天下の駐車場での作業ですからね。」

謎Zさんの顔が汗だくになっていました。
「ダストシールをはめますよ。これなんかは、オイルシールに比べたら屁みたいな作業ですよ。」

パチン!

「はい。装着完了。」

「確かにそうですね。」
「まっちゃん、ストロークしてみてよ。」

「さっきのフォークのガタが全く無くなっていますね。」

「そうですね、さっきも言いましたけど、オイルシールにはベアリング効果もあるんです。上下のオイル漏れ防止と、左右のベアリング効果。これら小さなパーツは値段は結構するけれど、役割はバイク一台の操縦性を左右する、もの凄い大切パーツなんです。」

「オイルシールをなめたらいけませんね。」
14:26 謎Zさんの手により、アウターZX-4インナーゼファー400カイのフォーク一式は2本ともダストシール装着までの作業を完了しました。

「謎Zさん、いよいよですね。」

「これからフォークオイル注入へプロセスを移していきます。ラパイドの大将からは上から133ミリという情報を頂いていますが、肝心要のオイル容量が何ccか解らないのが手探りというところです。」

「たくさん入れて吸いましょうか。」

「そのとおりです。それしかありません。早速はじめましょう。」
「僕のザッパー・ゼファー750のフォークもナオちゃんのフォークも450cc位入りました。ZX-4がどれ位入るのか解らないけれど、ゼファー400カイやZRX400も41パイフォークで構造が同じなら450cc辺りがニアーかも知れませんね。とりあえず400cc放り込んでみましょう。」

「そうしましょう。」

メスシリンダーで400ccを計測。こうしてみると、結構オイルが入る事が解ります。

そしてフォークにオイルは注入されて行きました。オイルの色は真っ赤っ赤。Kawasaki純正のフォークオイルの♯10。
「ホンダなんかはね、車用のATフルードでいいという・・。」

「オートマオイルの事かな?」

「そうなんです。粘度もかなり少なめのもの。Kawasaki純正の♯10は結構ガツンっ!と来るからお勧めですよ。オイルの粘度だけでも差があります。この夏場に入れているから柔らかく感じるでしょ。でもね、冬場なら粘度が出てきてそう感じないんですよ。こういう仕事を続けていると、季節によっても違いが体験出来るんです。♯15や♯20と番数を上げると硬くなる傾向に。最初は♯10で確かめてみてください。オイルはいつでも変更可能ですから。」

「特性ですかぁ・・。私は今回のOHで綺麗になったら何でもいいかな。」
「こだわり無くしてますやん。フォークもオイルも全てKawasakiにこだわりましたと、ホームページで訴えるほうがいいのに。」

「それいいね〜。それ。それでいきますわ〜(爆)」

「フォークのセッティングはオイル粘度、オイル量、スプリング強度とオリフィス(穴)の数や大きさにかかってきます。オイル粘度は時には番数をブレンドしたりします。オイルはたくさん入れれば上のエアーが少なくなり、少なければ上のエアーが多くなる。これも調整のひとつ。」

「量でも変わるのですね。」
「スプリング強度はさっきのZRX400のスプリングとZX-4のスプリングを比較すれば解りますよね。オリフィスはシートパイプで言えばゼファー400カイの方がかなり大きかったでしょ。この穴を大きくしたり、溶接して穴の数を少なくしたりしてダンパー効果を調節したり出来ます。」

「同じバイクでいろいろ試したら特性が理解できて楽しいでしょうね。」

「いろいろある選択肢でスプリング交換は割とすぐ出来ますよね。まっちゃんがさっきから気にしてるZRX400のスプリングに交換なんかは時間があるときにでもジャッキアップしてやってみてはいかがでしょう。」

「そうか、スプリング交換なら私にでもできそうね。」
「シールさえ変更しなかったら特殊工具も要らないからオイル交換も自分で出来ると思います。いろんな番数をブレンドしてみて自分の走りにあったものを探し当てる事も楽しいかもしれませんよ。」

「私、何度も言いますが、街乗り派なんです。」

「プププッ!まっちゃん、僕はオイル計測で忙しいから今の間にストロークさせてエアーを抜いて頂けると有難いです。」

「おおぉ〜・・何でも言って下さいね。」

こうしてオイルを入れたばっかりのフォークをストロークする。
ポコポコポコポコ・・・ッ!

何回ストロークさせてもエアーが浮いてくる。そのうちオイルがどんどん下がっていき落ち着いてきました。
「まっちゃん、2本目もお願い!」

「はいな!」

ポコポコポコポコ・・・ッ!

何度も何度も繰り返して行くうちに、双方の油面は次第に揃っていきました。

「これが油面を計る際のオイル位置ね。」

「その通りです。」
14:36 いよいよオイル油面の測定に・・・。また特殊計測器具が出てきた。

「ラパイドの大将から教えてもらったトップから133ミリに15ミリ足して148ミリで吸ってみましょう。」

スコ〜ッ!。

「エアー吸っています。た・足りない・。400ccで足りないということ。」

「結構入るんですね。」

「あと40cc足してみましょう。」
ジュルルルルル〜。

「10cc吸えました。トータル430cc辺りが答えの様です。」

「同じKawasaki41パイフォークの値とほぼニアーという事でしょうか?」

「う〜ん、解らないけれど結構多い目だと思います。」

ZX-4アウター、ゼファー400カイのインナーを使用されるユーザーの方!オイル量は430ccですよ〜!とこのコンテンツで公表しても参考にされる方はまずないと思われる〜(笑)
続いてZX-4純正のフォークキャップはガソリンスプレーとブラシで洗浄されました。

アルミパーツのネジ山には、無数のバリが存在する事も確認しました。

「謎Zさん、ZRX400のキャップはこのインナーに着かないんですよ。」

「そう書いてありましたね。同じKawasaki41パイなのにね。何か機会があってゼファー400カイのキャップが手に入ったとき、キャップのネジ山が合うかどうか試してみては如何でしょう。」

「このZX-4よりも15ミリ長いインナーがゼファー400カイのものかどうか、今は仮定ですけど本当のところどうなのか知りたい。」
「誰だって、同じKawasaki41パイのフォークなら同じフォークキャップで流用可能と思って当たり前の事でしょう。でもそれを若干変えている所もKawasakiらしいなぁと。キャップが着かないところでまずZRX400のインナーではない事が確定しました。あとはZZR400か、ゼファー750か、ZZR400しか残されていないんですよね。ヤフオクで検索してインナー長を質問攻撃するのもいいでしょう。」
「自分のバイクで何か解らないパーツがあるというのはやらしいなぁ。」
「ゼファー400カイで間違いないと思いますよ。」
「そういう事にしておきましょう(爆)」

14:54 左右のキャップ洗浄が終了し、いよいよフォークにはスプリングとカラーが入り、フォークOH完成が間近に迫っていました。
15:00 完成〜っ。

「まっちゃん、出来ましたよ!。ストロークさせてみて!」

「どれどれ・・・。」

スゥーーーーーーーーーーーッ!

「何ですかこれは。グチュグチュ言わないしメッサ柔らかい感じがします。」
「フロントフォークOHの醍醐味はここにあります。フォークインナー・アウターをフォークオイルが移動しているだけであれだけオイルは真っ黒になり、アルミカスが出ていました。それを清掃し、オイルを新品に換えようものなら、このストロークの感触があって当然なんです。」

「それにしても違いすぎますね・・。」

「新車納入日から日々劣化していくものなんてなかなか気が付かないもの・・チェーンみたいに外から見れるものはいいけれど、フォークの中身なんて外から見えないのですから・・エンジンにはオイル窓はあるけれどフォークにはオイル窓なんて無いですからね。」
「その通りです・・・。」

ラパイドの大将が以前に、リアはオーリンズやホワイトパワーなどレーシングサスが手に入りやすくなって換装はいとも簡単に出来るけれど、フロントフォークについてはバイクの操縦性を殆どを占めるパーツであるものの然程重視されていないも・・のというお話を聞いた事があります。

今、フロントフォークのOHを終えてこの動きの違いを感じで思うことは、シールからオイルさえ漏れていなければOKという軽い認識は←私だけ(爆)相当あまいものと感じざるを得ないのでした。
15:06 フォークが完成したところでフロントホイールへと作業は移っていきます。
15:18 ベアリング挿入作業は終了しました。
15:31 愛姫ちゃんからとりあえずはめていたZRX400のホイールとフォークは外されていきました。そしてZX-4フォークが装着されました。

「謎Zさん、休憩なしです。ちょっと休みましょう・・。」

「そうしましょう・・。意識がモウロウとしてきました・・。」

「10:00からずっとですからね、熱射病でいてもうたらえらい事ですから。」

「全くそのとおりです。」

そして、氷入りグレープジュースで熱い体を冷却しました。
「まっちゃん、これ結構効きますね。気持ちいいです。」

「出前専門のバイク屋さんをお呼びしたとはいうものの、今日の作業中に近所の奥様から暑い中熱射病大丈夫ですか〜?と何度もお声がけ頂きました。それ程、今日は暑かったんですよね。」

「直射日光は避けて移動してましたけど、結構しんどいですね。」

15:54 そういいながらも、いよいよ最終仕上げに向けて作業再開。

「まっちゃん、左のフォークを2ミリ程下げてください。」

「2ミリですね。」
「シャフトがスッと入らないといけません。左右のフォーク位置をきっちり合わせる事で随分走りに変化が生じてきます。」

「トップブリッジ位置・上で合わせればOKかと思っていました。」

「個体差はあるけれど、基準はシャフト位置なんです。うんうん・・・そこ。そこで決めてください。」

「了解しました。」

私がトップブリッジから左側フォークを下げたのはほんのちょっとのこと。これだけでも大きな違いがある事を再認識しました。
「ホイールをはめてみましょう。」

「いよいよですね。」

「廻してしてみましょう。」

クルクルクルクル〜っ!

「ベアリングを新品に交換するとこんなに廻るんですよ。」

「廻るというより、廻り続けていますね(爆)」
「ところでZX-4のホイールは軽いなぁ。家にゼファー750のホイールあるけど結構重いですからね。」

「今回のカスタムでZXR400やZRX400のホイールを触りましたがZX-4のホイールは本当に軽かったですね。」

「本当に軽いと思いますよ。ゼファー400ユーザーが探し続けている逸品なんですよね。2.5J→3Jになるし、流用も割と簡単だし。そして軽いから。多分ゼファー400前期のものよりも軽くて太いでしょう。はい、締め付け完了です。」
「おつかれさまでした。」

「長い作業だったけれど無事に終了しましたね。」

「本当にありがとう。」

16:08 本日のメイン作業は終了しました。

その後、今日の作業の話で盛り上がりました。

「まっちゃんのインナーは結局のところ何なんでしょうね。」
「すっかりその話はゼファー400カイで落ち着いていたのに。」

「私が触る度にフロントブレーキホースがどんどんたるんで来たの知ってる?」

「知ってますよ。謎Zさんに来て頂いてから6.5センチ落ちてますからね。もうたるみ過ぎて行き場を失ってますね。」

「結局ドナー君から受け継いだもの何に?」

「結構あるんです。スイングアーム、フォーク、ホイールなどなど。」

結構楽しい会話が続きました。
16:42 フェンダーを装着しました。

16:49 タンクが装着され走れる状態になりました。

「謎Zさん、今日は本当にありがとう。」

「いえいえ、暑かったけれど、楽しかったですよ。各パーツのボルトは、走行前、走行後にもう一度しっかり締めてください。インプレを楽しみにしています。」
「こちらこそ・・楽しかったですよ。本当にありがとう・・。今日は随分体に悪い作業をお願いしてしまいました。帰られてから十分に水分をとられてゆっくりとお休みくださいね。」

「いえいえ。ありがとう。」

そうして謎Zさんとお別れしました。

謎Zさんのお店出張バイクショップReboot。またお世話になる事と思います。ホームページはこちら。
http://gg-club.com/reboot/
19:04 左ウィンカーハーネスがメインハーネス根元でちぎれて死んでいたこと、これの応急処置と、ウィンカー類をZ400FX純正からCGCタイプに換装しているうちに真っ暗になってきました。タコメーターも死んでいる。これは後日治すことに。こうして本日の作業は終了しました。

松阪のA-COOPまで試運転をしに行きました。

フォークとタイヤとインプレは別れるけれど、タイヤは攻めないと解らないからフォークだけの感想。
まとめると、

1.サスの動きが非常にスムーズになった。
2.ちょっとした段差でハンドルに伝わる突き上げが無くなった。
3.サスが長くなったように感じる。

ナオちゃんやバーバ君の感想と全く同じだったのです。フォークは延長キットを外して位置が2センチ程下がったのにも関わらず、長く感じたのです。不思議な話ですけども、3人共同じインプレだから間違いないでしょう。
23:20 ナオちゃんから電話がかかってきました。

「バイク出来たんなら、出て来いさー!」

といい事で、ミニストップで待ち合わせ。
「ひでやん〜!随分良くなったなぁ。」

「そうね・・。長い間いろいろ試行錯誤を繰り返した甲斐がありました。謎さん、伊勢のまっちゃんさん、ラパイドの大将他、たくさんの方々に情報を頂いたり助けてもらった結果です。すばらしいカスタムだったと思います。」

「かれこれ1ヶ月走れなかったもんなぁ。ひでやんは、長期的に見ると走れる期間が短過ぎるよなぁ。」

「足廻りを煮詰めようとすれば乗れなくて当たり前ね・でもこれで落ち着きましたよ。でも謎Zさんの手によるナオちゃんのエンジンOH、2日で終了というのもある意味謎な話ですからね。」
「謎なぁ〜。あの人は謎やなぁ。」

「今日謎Zさんの仕事を一日中見ていましたが、もの凄く丁寧なお仕事でした。いろいろ教えてもらったしね。楽しかったなぁ。」

「自分の時も、ものすごく丁寧だったから。でも良かった良かった。」

「これでまた出て来いさ〜!の餌食になるなぁ。」

「当たり前やに!」
23:45 ナオちゃん、アヤちゃんと別れました。

こうして我が愛姫ちゃんZ400FXのフロントカスタムは終了しました。

セッティングを語ればキリがない。でもちょっと走っただけですが、今までになかったフロントの安心感を得る事になりました。

ラジアルタイヤのインプレは後日に。
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